嘘が本当になる話
嘘にはいろんな嘘がある。嘘も方便というような嘘、自分の身を守るための卑怯な嘘、自分の希望や夢を嘘のように語る大ボラなぢ様々だが、ここでいう嘘とは最後の大ボラの話だ。
健介の友達に周平という少年がいた。明るく活発な子でいつもおもしろいことを言うので、周平と遊ぶのが健介も好きだった。ある時周平が健介にこんなことを言った。
「この前、じいちゃんの家の畑で小判が見つかって、大勢の大人が見に来たんだって。なんでも江戸時代の珍しい小判で、その一枚だけで自動車が買えるんだってじいちゃんが言っていたよ」
「へー、すごいなあ。春に菜の花でいっぱいになる畑だね」
健介はその畑で今までも何度か遊んだことがある。
「そうだよ、あそこだよ」
健介はとてもうらやましかった。健介は埋蔵金発見の話や、恐竜の化石を見つけた話が大好きだった。だから周平の話を聞いて、自分の身近で現実にこんなことが起きたということがうれしいし、うらやましかった。
「小判見せてくれる?」
「じいちゃんが箱に入れて持っているよ」
周平は素っ気ない返事をした。それから数日後。健介は学校の帰りに周平の家に寄ってみた。周平はいなかったが、姉の悦子がいた。
「畑で見つかった小判を見せてください」
健介の声を聞くと悦子は急に笑い出した。
「小判じゃないわ。寛永通宝という銅銭よ、見つかったのは」
そう言いながら悦子は、マッチ箱に入れてある銅銭を見せてくれた。
「周ちゃんから聞いたんです。ありがとうございます」
翌週の土曜日の放課後、このことで周平は健介に一つの提案をした。
「健ちゃんなあ、絶対あるんだよ。あそこに小判が」
「それじゃあ二人で探そうよ」
健介と周平は、学校の潮干狩り遠足でもらったスコップと熊手を持って畑に向かった。
一時間、二時間、夢中で掘った。しかし何も出てこない。でも二人とも帰ろうとは言い出さなかった。何も出てこないのに何か楽しいもの、ゾクゾクさせるものがあった。今に見つかる子もしれないという期待感が二人にいつまでも土を掘らせた。
二人のお腹がグーっと鳴り出した時だった。
周平の熊手がカチャッと何かに当たった。小判だと思ってみると熊手の先には何枚もの銅銭があった。がっかりしたが二人のスコップを持つ手にはますます力が入っていた。子供にとって銅銭だって最高の宝物だ。
もう空腹感なんて二人にとってはどこかに飛んで行ってしまった。それどころかその二十分後には健介の熊手になんと本物の小判がかかっていたのだ。続いて周平の熊手も小判をとらえた。もう何が何だかわからないほど興奮する二人の少年の拾った小判は、これだけではなかった。この後、半日がかりで、全部で十五枚の小判がザクザクと出てきた。新聞記事にまでなる大騒ぎになった。
「本当の小判を取っちゃったね。夢みたい」と健介は思った。
周平は得意げに言った。
「なあ、言った通りだろ?」